すぴすらのろぐ

読んだもののメモとかポエムとか

ゼロ知識アボートレス並列スケジューラが存在しないことの証明

0. はじめに

過去の投稿の以下の主張の条件付き証明と条件を満たさない場合の反例の存在の証明です。

以下の4つの性質のうち、最大3つまでしか同時に満たせない、という主張。

  1. スケジュールの直列化可能性
  2. トランザクションの実行の並行性
  3. トランザクションの実行の失敗回避性
  4. アプリケーションに対するゼロ知識

もしくは以下の3つの性質のうち、最大2つまでしか同時に満たせないという主張。

  1. 失敗を引き起こさない直列化可能スケジューリング
  2. トランザクションの実行の並行性
  3. アプリケーションに対するゼロ知識

この主張のイメージ図:

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The Concurrency Control Triangle

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トランザクション間の隠れた制約の表現と解釈

前回のポストで、アプリケーションに対するゼロ知識モデルではトランザクション間に隠れた制約(hidden restrictions)があると考えざるを得ないと書きました。

本ポストでは、トランザクション間の隠れた制約(が限定的であること)をどのように表現してスケジューラに伝えればよいか、およびスケジューラはそれをどのように扱えばよいかについてまとめました。

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ゼロ知識モデルでできなくなること

前回のポストで書いた、アプリケーションに対するゼロ知識がどれくらい強い制限なのかについての補足です。

ちなみに、前回のポストのメインの主張(以下)には反例がありそうでした。こちらは後日まとめたいと思います。

アプリケーションプログラムに対する知識(前提)をスケジューラが持たない場合、アプリケーション(複数)が発行する各トランザクションを、直列化可能なスケジュールで並行にかつ常に成功裡に実行・完了させることはできない。

反例とは、アプリケーションに対する知識がゼロであっても、直列化可能で直列化失敗を引き起こさないスケジューリングが、部分的には並行に(インターリーブ)できるという意味です。

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アプリケーションに対するゼロ知識モデルにおける同時実行制御のトレードオフ

1行で

アプリケーションプログラムに対する知識(前提)をスケジューラが持たない場合、アプリケーション(複数)が発行する各トランザクションを、直列化可能なスケジュールで並行にかつ常に成功裡に実行・完了させることはできない。

<追記 2020-04-29>反例がありました。後日まとめます</追記>

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3-CNF SATからpolygraphのacyclicity判定問題への帰着

このポストは、papa本で証明されている「スケジュールsが与えられとき、それがview serializableであることのテストはNP完全である」の証明の一部を構成する、3-CNF SAT問題からpolygraphのacyclicity判定問題への帰着についてのメモです。

papa本は以下の本のことです。

Theory of Database Concurrency Control

Theory of Database Concurrency Control

証明の流れ

  1. スケジュールsがview serializableである iff polygraph P(s)が非巡回である (Theorem 2.4)
  2. polygraphが非巡回であることのテストはNP完全である(Theorem 2.5)
    1. 3-CNF Fが充足可能 iff polygraph P(F)が非巡回である(本ポストの内容)
    2. 3-CNF Fからpolygraph P(F)が多項式時間で構築できる
  3. polygraph Pが与えられたとき、「Pが非巡回である iff スケジュールsがview serializableである」ようなスケジュールsをPから構築できる(Lemma 2.4)
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トランザクションの単位とhidden restrictions

このポストは、papa本読書会第1回目で読んだ範囲における、トランザクションの単位とトランザクション間のhidden restrictionsについてのまとめです。 議論としては2回目の内容も含んでいます。話題としては2回目の内容を含んでいます。ポストの内容は個人的なもので読書会の総意ではありません。

具体的には、こだわっているトランザクション間の依存関係の話です。

papa本は以下の本です。

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serializableとconsistent state

このポストはpapa本読書会第1回目で読んだ部分のうちのconsistent stateについてのメモです。p.8くらいまでの範囲です。

このポストではpapa本は以下の本のことです。

大学の図書館においてあったりします。研究目的なら大学等に所属していなくても図書館を利用できることが多いです。

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